クリニック専門 組織コンサル
鳳雛(ほうすう)の田原です。

 

今回は、
人事評価制度の作り方②「評価制度導入後の不満を予測」

に関してお伝えいたします。

前回は、
「評価制度を作るには、まず、目的をハッキリさせることが重要」

とお伝えしました。

 

例えばこんな感じだと。

・公平なルールを作って、優秀な人こそ高い評価をつける大義名分を作りたい
・経営者の考えや、どこを評価するかをきちんと言語化したい
・勤務歴が長いだけで、勘違いしているベテランスタッフに基準をわからせたい

今回お伝えするのは、

「評価制度を導入後の不満を予測して、対策をしておく」

という内容です。

 

 

 

1、枝葉末節の不満は必ず出る

苦労して評価制度を作って、導入しても、
不満がゼロということは、
どの医院でも、
どの会社でも、
ほぼありません。

 

何かしら、大なり小なり不満は出るものです。

 

特に人間は、「損」をしたくない生き物ですから、
今まで貰えていたものが、減ってしまう事態となると、
人が変わったように、
不満を声高に叫びます。

 

 

 

2、私の会社員時代の実話

私の会社員時代にも、
普段は、

「温和で、どこか脱力系の天然な女の子だなぁ」

と、皆からそういう印象を持たれていた女性社員が、

自分の評価が、
自分と思っていたモノと違い、ボーナスが減った時に、
ものすごく怒って(いかって)いました。

 

周囲の人も、
「えっ、こんな子だったの?」

と全員が引いていました。
それくらい、豹変しました。

こういうことが、現実問題、
本当に起こり得るということです。

 

 

 

3、起こり得る不満の具体的内容

では、
評価制度導入後にどんな不満が起こるかというと、

A、評価の最終決定は院長だけど、その院長が皆の仕事ぶりを把握していない
  (院長室に籠ることが多い。現場と接点すらない 等)
B、陰ではサボっているAさんの方が、私より評価が高いのはどういうこと?
C、日常業務にプラスして、自己評価や上司評価をつけたのに、結局、手取り金額が減った
D、信用できない上司(女性スタッフ)に評価されても・・・
E、評価項目が多過ぎて、ややこしい。面倒臭い

このようなことです。

 

 

4、女性スタッフの傾向

女性スタッフは、
院長のような起業家ではないので、
スキルアップや、出世、給料アップといった
向上心や野心をバリバリに持っているわけでもないです。

どちらかというと、
そのような向上心よりも、
『周囲との和』を重視します。

・「今まで上司だったAさんが、評価の結果、私の部下になるのはやりづらい」
・嫌われそうだから、厳しい評価がしづらい
・私の評価によって、部下のボーナス額を下げたくない
・(できていない自分を棚に上げて)「低い評価をされたから、やる気失くしました」
・「今まで、ユルさを許される環境が好きで、この医院にいたんです」

こんな甘えた発言をする女性スタッフも多く存在します。

ですから、
100%の評価制度、
理想を追うのではなく、
「今の環境の中で、できうる評価制度にすべき」

ということです。

 

 

 

5、評価制度の作り方の手順

じゃあ、具体的にどうすればいいかというと、

一、院長は、自分でなくてもできる仕事は、どんどん委譲して、時間を作り、
 受付等、なるべく全体の仕事に目を配る時間を少しずつでも作っていく
二、院長一人で評価するのではなく、最低もう一人、評価者に値する人材が必要
三、明らかに全うな仕事をしていて、周囲も認めざるを得ない主任等を育て上げる(評価者)
四、評価によって『立場の逆転』が起こらないタイミングで導入する
五、『立場の逆転』が起こりそうなら、次期出世候補の人に、その辺をどう考えるか、事前にヒアリングする
六、低評価になりそうな、「役職とプライドだけが高い、ベテランスタッフ」が、最悪辞めても大丈夫な状態、
 スタッフ数・マンパワーに余裕がある時に導入する
七、導入は、まずは試験的にやってみて、スタッフの様子を見る
 
例)最初は、給与・ボーナス額に反映させないケースでスタート

このようなことです。

大変かもしれませんが、
評価制度が適切に導入されれば、

a、これまでサボりがちだったスタッフが、サボらなくなる
b、マジメでやる気のある人材が、遠慮なく頑張り、伸びる
c、これまで先輩のダラけ具合により、シワ寄せが来ていた人もモチベーションが上がる

等、様々なプラスの要素が徐々に出てきます。

導入時こそ大変ですが、
安定すれば良いこと尽くしでもあります。

次回、さらに続きをお伝えいたします。

 

 

6、追伸

評価制度によって『立場の逆転』が起きそう。

それでも早く、評価制度を導入して、
・「優秀な若手を引き上げたい!」
・「今の ‟ポンコツ上長” を降格させたい!」

そのような場合だと、
打開策はこれです。

「優秀な若手をひとまず引き上げて、今の上長と同じ立場にする。
同じ立場なのに、その仕事ぶりの違い、やる気や能力の違いを皆に見せつける」

 

一時期、多少の人件費は嵩みますが、いきなり『立場の逆転』をさせるより、
このいきさつを経て、現在の ‟イケてない上長” が降格になると、
「そりゃ、仕方ないよね」

と、全員に納得感が生まれます。

 

 

 

7、まとめ

a、人は、自分が損をすると、豹変して怒り狂うことがある
b、起こり得るマイナス事態を事前に予測して、対応するのが重要
c、評価制度が安定すると、医院の風土は本当に良くなる