医院のマネジメントを行う上で、
富田英太 氏「繁盛店主の7つの教え」 (ビジネス社)からの学びを活かそう!

富田英太さんは、数冊本を出されていて、
処女作の「お金をかけずに繁盛店に変える本」が有名で、ロングセラーとなっていますが、
富田英太さんの著書の中で、私が最も好きなのは、今回ご紹介のこの本。

理由は、
・エピソードが多いこと(具体的事例)
・従業員30人以下の経営者が押さえておくべき “会話力” が具体的に語られている
・ビジネス書やビジネスセミナーを活用する、“勉強力” が載っている

といった点です。

出版当時、編集の納期が迫っていたのか、
誤字脱字が多い本ではありますが、それを大きく上回る内容の良さです。

現在は廃刊のようですが、
それを乗り越えて手に入れることで、周囲に差がつく本とも言えます。

※富田英太氏HP
http://achievement-s.com/

 

1、書かれている内容を一言に凝縮すれば?

価値=言葉/価格

この公式を考え抜け!
ということだと思います。

 

2、戦略のない、我武者羅な努力は無意味

このような内容が書かれています。

汗の量と、売上は比例しない

確かにそのとおり。
厳しい言葉で、悲しさもわいてくるが、これは正しい。

どうしても日本人は(特に昭和の人に傾向として多い)
「汗は裏切らない」
「黙って3年は努力せよ」
といったことが好きで美徳にしているが、私はそこに違和感を感じます。

プロとして努力するのは当たり前で、
プラスアルファ、才能と工夫も必要だと思います。

医院経営でも、
経営者として、診療技術以外にも、
・統率力
・共感力
・計画力
・実行力
・推進力
・気配り

等、様々な能力が必要とされます。
限られた時間の中で、成果に結び付ける工夫、
自分に才能がなければ土俵を変える、
才能ある人と提携する、雇う
といった手段もありますね。

何事も一人でしようとせず、
向いていない、非効率なことにはムダな汗をかかず、任せていくことが経営者には大事です。

<行動>
自分でやると、明らかに効果が出ない不向きなことは、他者に任せていく。
汗に逃げない。

 

3、オーナーが過労で倒れた話

理容室のエピソードとして、このような内容が書かれています。

独立してから10年。ほとんど休むこともなく、働いてきた理容室オーナー。
スタッフの定着率が悪く、自分以外の人間を信じることができないと、オーナーは働き続ける。
その無理が祟ってか、過労で倒れ入院。
検査してもらうと内臓はボロボロ状態。2ヶ月以上の入院を勧告されてしまう。
それでも毎日のように、病院から店舗に
「ちゃんとお店の運営はできているか?今日の数字は?」
と電話をかける。
そんなある日、店舗マネージャーから泣き声半分に
「もういい加減にしてください。僕たちを信じてください!」
と本気の本音を伝えられた。
オーナーはその時初めて自分が、今までスタッフのことを信じていなかったということに気づく。
信頼できないのはスタッフではなく、自分自身だったと。

この後に、そのオーナーはワンマン経営をやめて、
スタッフ中心のマネジメント方式に変えて、スタッフの離職率も下がったそうです。

院長も一度、スタッフの方に思い切って任せてみるのもいいですね。
(もちろんケースバイケースですが)
任せてみると、今までその部下が、

できない」のではなく「やらない」だったことに気づくはずです。

意外と、院長や主任、師長等が、
「あの人には(この業務は)できない」
と決めつけて、結局は自分がやってしまう。

上の人がいつまでも自分でやってしまうから、
他のスタッフがいつまでも新人気分になってしまう。

部下に「実行責任者」や「教える立場」と与えてあげると、
責任感が変わり、視座が変わって、急に成長することはよくあります。

従業員の “視点” を意図的に変えてあげることは、医院マネジメントで重要です。

<行動>
従業員の「視点」を意図的に変えないと、
いつまでも『権利の主張』ばかりするようになる

 

 

4、美容院で、新人が反旗を翻した話

エピソードをもう一つ。このような内容が書かれています。

美容師兼オーナーの人を指名して予約してくれたお客様を待たせてばかり。
そのお客様に謝りに行くのは、新人アルバイト。
そんなある日、全体朝礼の時に、そのアルバイトが遂に口火を切りました。
「この店は『お客様のために』を理念に掲げているのに、お客様を待たせてばかり。
少しおかしいのではないでしょうか?」
先生とも呼ばれている美容師兼オーナーに向かって、言いにくい意見を真正面から伝えたのです。
経営者の人間です。
間違いもありますね。しかしながら、理念のない店舗では、経営者の意見は絶対になってしまいます。

コンサルタントがよく口にする
「経営理念は大事ですよ」

確かにそのとおりではあるのですが、
現場の院長にしたら、
「別に経営理念をしっかり作り込んでも、すぐに利益が増えるわけでもないし・・・」
これが本音だと思います。

しかし、上記エピソードと同じで、
院長というのは、従業員にとって、医者でもあるし雇い主でもあるのです。
「院長、ちょっとそれ間違っているのでは?」
と内心、看護師の人や医療事務の人が思っていても、
なかなか院長に対して、口に出して言えるものではありません。

ただ、経営理念という、すべての基準となるモノサシがあれば、
どれだけ立場が弱い人であっても、正々堂々と、
「これは理念に反してますよね」
と言えるようになるのです。

理念がないと、
従業員は、院長が仮にズレた行動をした時、「おかしい」と思っていても、
「言ったら、評価を下げられるかもしれない」
「言っても、怒ってイライラするだけだからやめておこう」
という心理ブロックで、言わなくなります。
誰も正してくれず、まさに『裸の王様』となってしまいます。

別に院長に限らず、師長、事務長、主任といった方が、
理念に反した行為をしているが、
言うに言えず、苦々しい思いをしている優秀な新人さんもいるかもしれません。

院長が「小さなこと」と感じるかもしれない、このようなことが
優秀な人材にとっては、フラストレーション、ストレスになっていることは多いです。

経営者として、そんな優秀な人のためにも、
また自戒のためにも、
経営理念の作成は、肝となってきます。

私自身、上記エピソードをコンサルティングで話すことも多いです。

<行動>
理念をきちんと作り込む。
患者様のためにも、優秀な従業員のためにも、自分のためにも。

 

 

5、目標設定するだけでもダメ

このような内容が書かれています。

戦略とは優先順位である

意識の高い医院さんでは、スタッフの方全員に目標設定をしてもらったり、
やることリストを書いてもらっているところもあると思います。

これはすごく良い取り組みですし、
時間を割いてでもする価値のあるバリューの高い行為です。

ただ、私はクライアントが上記をされている場合、こう言います。

「それだけではダメだ」

目標設定をした後には、プラスアルファでやるべきことがあります。
やることリストをたくさん出してもらった後には、プラスアルファでやるべきことがあります。

それが、細分化して優先順位をつけること。

あれもこれもやることの項目が多かったり、
目標があまりに大きすぎると、
自分で書いたモノなのに、どこか他人事になってしまって、
その紙をどこかに貼り付けようが、ただの景色となってしまいます。

結局は、どれ一つやらなくなってしまうのが人間。

院長としてすべきことは、
「じゃあ、この中から、1番最初に手をつけることは?」
「それはいつまでにやり遂げる?」

と絞って、具体化していき、
さらに大事なのは、
「その後の進捗はどう?」
中間確認をすることが要です。

それくらいしないと、人間、なかなか達成なんてできないですよね。
目標を作っても、
すぐにその作成時のモチベーションはどこへやら、
日常業務にばかり目を向けて、それ以外のことはやらなくなります。

あなたにも経験があるのでは?

<行動>
「今年の目標作ってきて」で終わりにしない。
「目標を発表して」で終わりにしない。
その後の進捗をきちんと中間確認していくことが一番力を注ぐべき作業

 

 

6、まとめ

・価値(顧客が感じる価値)=言葉(ストーリー性)/価格
をとことん考える
・努力や汗に逃げず、工夫する。任せてみる
・医院のモノサシとしても『理念』は必要
・目標設定だけではダメ。細分化して超具体的に。やる順番をつける

 

※富田英太 氏「繁盛店主の7つの教え」 を医院経営に活用する②へ続く